「しゅー…」
青空に後ろめたさを感じて はじめて、気づいた。
「あ。わたし おばけになってる。」
おばけに憧れることは何度もあった。
明るい光に当たると消えてなくなっちゃう。暗闇のなかでしか 生きられない、おばけ。
小さいときによんだ おばけが登場する絵本のオチは大抵ーー朝が来て、しゅーっとしぼんで いなくなる おばけ。
日だまりの中にいた頃を思い出す。どうしてこんなにも、遠く かすんで見えるのだろう。
そこにいた時間が、たしかにあったのに。
あったのに。
おばけになって、はじめて気づくことがある。
遠い日だまりを 憧れをもった目で見つめる、
自分に。